[お酒の熟成(おさけのじゅくせい)]

 お酒は熟成するほどに、アルコールと水が馴染んで、カドがとれたまろやかな口当たりになります(物理的熟成)。

 それと同時に、日本酒やワインのような醸造酒では、お酒に含まれるさまざまな成分が、時とともに変化して多層的な味わいになります(化学的熟成)。


●アルコールが水と馴染む熟成(物理的熟成)

  酒類に含まれるアルコールが熟成することで、水と慣れ滑らかになる現象。

 アルコールの分子1個の周りを数個の水の分子が取り囲み「クラスタ」と言われるものを形成するからだとされています。新酒の時には刺々しかったお酒が滑らかな口当たりに変化するのはこのためです。

 一般的にアルコール分の高い酒類ほど効果的で重視されます。また、酸味成分や渋味成分の一部にも起きる現象らしく、生もと系酒母を用いたような比較的酸味成分の多い日本酒が熟成に適しているのは、剥き出しの状態では刺激性の強い酸や旨味成分と水がなじむためだと考えられています。

*1 電子レンジ燗よりも湯煎のお燗がおすすめなのは、電子レンジを使用するとマイクロ波によって水分子が揺らされ、せっかく形成されたこのクラスタが壊されてしまうからです。


●成分の科学的変化による熟成(科学的熟成)

  酒類に中に含まれる糖分や旨味成分などが、熟成によって結合・分解し科学的変化を起こす現象。

 この化学的変化の主体は酸化によるもので、色・香・味の変化に大きく関与します。「熟成とは緩やかな酸化現象である」と言われるのはそのためです。

 こうした変化は、日本酒に含まれる成分が多いほど複雑多岐に及び、また貯蔵温度が高くなれば変化の速度は速くなります。

 日本酒の代表的現象としては、ブドウ糖とアミノ酸が結合して酸化することで、最終的に着色成分であるメラニンを作る「アミノカルボニール現象」があります。熟成酒の色が濃いのはそのためです。また、熟成酒にカラメルのような香りがあるのは、糖分が酸化すると、砂糖を焦がしたような現象が起こるためです。



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