日本名門酒会

秋の純米酒頒布会 2021『酒蔵夜ばなし』


第2回11月

ばんだい じゅんまいしゅ

萬代 純米酒

[福岡県宇美町]


1800ml 720ml
1.8Lコース 720mlコース

R2BY 熟成酒(瓶貯蔵)

〜 酒どころ・福岡の誇り 〜


古の風情が残る蔵

西南戦争後に福岡の酒の酒質向上を牽引、全国に名を轟かせた『萬代』

本格焼酎のイメージが強い九州の酒文化は、本来、南半分が本格焼酎圏、北半分が日本酒圏です。

明治10年(1877年)に起きた西南戦争では、政府軍は熊本城に拠点を置き、西郷隆盛率いる反乱軍と対峙しました。各地から集結した政府軍で溢れた熊本では、日本酒の消費量が急増しましたが、熊本では伝統の赤酒が主流だったため、隣接する福岡の酒が熊本に持ち込まれました。日本酒の出荷量が急増した福岡では海運に便利な筑後川流域で酒造りが盛んになりました。

しかし、戦争終結後、福岡の酒は行き場を失うことになりました。その危機に立ち上がったのが、寛政4年(1792年)創業、宇美町の銘酒『萬代』を醸す栄屋さかえや6代目の小林作五郎でした。

作五郎は、日照りの年には水不足になる地元の稲作を守るために、自家田を潰して溜め池をつくるなどした人物です。作五郎は、2人の蔵人とともに県の役人に紛れて関西視察に同行し、酒造りの先進地であった兵庫県の灘(現在の神戸市、西宮市)や伊丹の銘醸蔵を見て回りました。作五郎たちが持ち帰った情報によって、たちまちレベルアップした福岡県の酒は、明治30年(1897年)には兵庫県に次ぐ、全国二番目の出荷量を記録するに至りました。

戦後の高度成長期の頃には、"名酒『萬代』を仕入れるために、地元の問屋は大振りな鯛を携えて行った"、という伝説的な逸話すら残るほどの銘醸蔵になりました。


(写真左)蔵の正面 (写真右)石藏利輔杜氏
(株)小林酒造本店 寛政4年(1792年)創業

お酒について
50%と70%の精米差仕込み、低精白ながら香り高い酒質の純米酒

福岡県と佐賀県にまたがる、有明海沿岸一帯は日本酒の蔵元が多く、幕末には長崎への出荷が増加しました。福岡藩と佐賀藩は幕府から長崎防衛を命じられていたため、自国の酒を持ち込んだのかも知れません。

江戸期、砂糖が輸入される唯一の港であった長崎では、貴重な砂糖を贅沢に使った卓袱料理が誕生しました。その影響もあって、北部九州の日本酒は総じて甘味の多い旨口の酒質となりました。

有明海沿岸から少し離れた『萬代』の味わいは、九州の酒らしい旨口を基調としながらも、酸味の少ない上品な味わい。今回お届けする純米酒は、一昨年から杜氏を務める石藏利輔氏が、福岡県産の一般米《ツクシホマレ》を使い、麹と酒母に使う原料米は精米歩合50%の大吟醸規格まで精米し、掛米はタンパク質がほぼ除去できる精米歩合70%%に留めて、香り高い「きょうかい1801号」を使用した新しい酒造りにチャレンジしました。やや甘口で滑らかな口あたりを秋の味覚と合わせてお楽しみください。

  • 【分析値】
  • [原料米]ツクシホマレ(福岡県産)
  • [精米歩合]掛米70%・麹米,酒母米50%
  • [酒母]中温速醸酛
  • [酵母]きょうかい1801号
  • [アルコール度]15度以上〜16度未満
  • [日本酒度]±0
  • [酸度]1.5
  • [アミノ酸度]1.6
  • [杜氏]石藏 利輔(社員杜氏)

醸造元/(株)小林酒造本店